身体が勝手に動いて膝の痛みをサポートしてくれた不思議な経験

膝にかかる力を下半身の筋肉に分散させる

私が、アメリカ生まれの整体教育ロルフィングに取り組むきっかけの一つとして、膝の痛みがあることを書きました。日本舞踊で立ったり座ったりの動作が多いことや、趣味の登山では下り坂の歩行で膝に体重がかかるので、酷使してしまったかもしれない。年齢からくる筋力の低下に加え、コロナ禍による運動不足が拍車をかけたかもしれないと思いました。

上の図はロルフィング協会のシンボルマークです。左の身体が右の身体になるように、指導者の方が面接や手技を通じて指導してくれるものです

膝の痛みの解決について、ロルファー(ロルフィングの指導者)が教えてくれたヒントは、膝関節にかかっている力を、足にあるもっとたくさんの筋肉を使って支えればいい、ということでした。現状は、足の筋肉が十分に働いていないということです。

十分に働いていない足の筋肉とは、例えば股の内側の内転筋、後ろ側のハムストリングス。また、足だけでなく、胴体の一番下、股にある骨盤底筋も含めて使えというのです。そうした筋肉全体が協力して膝にかかる力を分散させる、つまり御神輿の支え手を増やすというイメージでしょうか。

そのためには、骨盤底筋、内転筋、ハムストリングスといった筋肉に目覚めてもらって働いてもらうために、まずどこにその筋肉があるかを教えていただくことから始まりました。

内転筋やハムストリングスを触って意識してみる

下半身の筋肉を意識することは上半身より難しく、なかなかピンときません。本当にいろんな筋肉がちゃんと動員されるように動けるようになるかしら?と疑問でした。

ところが、転機は突然やってきました。11月下旬、奥多摩の御前山に山登りに行ったときに、不思議な体験をしたのです。

突然、股後ろの筋肉ハムストリングスが動き始めた

奥多摩の御前山は標高1,400m。なかなかアップダウンの激しい山でした。3時間半の登りのあと、山頂でお昼ご飯を食べて登りと別コースで下山へ。地図では、2時間半かかると書かれていました。

私は下りで膝が痛くなるので、下山のコースタイムは地図に書かれている時間をいつもオーバーしてしまいます。しかも今回、山頂付近の段差が大きく、30分も下らないうちに、右膝が痛み始めたのです。

これはマズイ。あと2時間私の膝はもつだろうか?不安がよぎりました。いつもですと、ストックを使って痛い側の膝をかばうとか、痛くない側の膝をメインで使うようにしたり、蟹の横歩きのようにして下ったりといろいろ工夫するのですが、ふと思いついて、「膝はありません!」と自分に言い聞かせてみました。

今までの経験上、下山でいろいろ工夫してきたことは、膝の痛みをますます意識してしまうので、「痛みを発している膝はない!」と思うようにしてみたのです。

下山時は膝の痛みでいつも苦労していました(写真は御前山ではありません)

そうすると、不思議なことが起こりました。股の後ろの筋肉(ハムストリングス)が急に動き始めて、足を前へ前へと蹴り出していくのです。結構きつい下りを、足がどんどん下っていきます。スピードが落ちないし、姿勢がよくなり、ストックがじゃまでした。膝はというと、ときどき痛くなるものの、主に働いているのはハムストリングスなので、膝はそれに乗っかっている感じ。いつものように不安になることはありませんでした。

この経験を、ロルフィングの指導者の方に話したところ、面白いたとえ話をしてくれました。今まで“膝さん”は“私の足”という会社のエースであった。エースなので、会社では膝さんばかりに頼っていた。膝さんが働き過ぎてバーンアウトしてしまったので、少し休んでもらい、他の社員(今回はハムストリングさん)ががんばって働き出したのだ、と。なるほど…

胸から足があると思って歩く

頭でいろいろ考えて工夫して歩行する、のでなく、身体が勝手にやってくれた、という体験は貴重なものでした。もちろん「膝がない」という思いつきは必要だったわけですが。

これからは膝が痛み始めたとき、「膝がない」というスイッチを入れてみて、身体に任せるということをすればいいんだと分かったら、新しいお守りを見つけたようで、不安が安心に変わりました。今まで使っていなかったところに脳の指令がくだって、ちゃんと身体は働いてくれるわけですね。これこそ“身体の智恵”じゃないでしょうか!身体ってスゴイ!

実は「膝がない」などという突拍子もない思いつきは、その数カ月前の指導者の方が教えてくれた、あるワザにありました。それは、歩くときに、現実にある足でなく、胸のあたりから足が出ていると思って歩いてみる、というワザです。

そうすると、足の筋肉だけでなく胴体のさまざまな筋肉も動員されて歩くことになります。とくに、大腰筋という上半身と下半身をつなぐとても大切なインナーマッスルがよく使われるようです。姿勢がよくなって気持ちよく歩けますので、皆さんも試してみてください。とくに私は、きものを着ても裾が足にまとわりつかず、シャカシャカ歩けるようになりました。

ロルフィングの指導者の方は言いました。「日本舞踊も、身体の方が勝手に踊っているという感覚になるといいねぇ~」と。

いやいやそれができたら、もう名人の境地だと思いますけど~。


最後までお読みいただきありがとうございます。

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