江戸時代の大津絵を見てみよう~東京ステーションギャラリー「もう一つの江戸絵画 大津絵」展

2020年9月19日~11月8日、東京ステーションギャラリーで「もう一つの江戸絵画 大津絵」展が開かれました。日本舞踊をやっている人には、江戸時代の人の息づかいが感じられる、ぜひ見て欲しい絵画展です。

藤娘の元となった大津絵

昨年(2019年)12月、浅草で行われた「坂東流チャリティ舞踊会」。私は衣装付きで藤娘を踊らせていただきました。

当日、観客全員に配布されるプログラムの演目紹介は、あらかじめ出演者が書かなければなりません。そこで、私は次のように書きました。

江戸時代、近江国大津あたりで売られた民族絵画「大津絵」は東海道の人気のお土産品だったそうです。『藤娘』は藤の枝を担いだ娘を描いた「大津絵」を舞踊化したもので…(以下略)

あちこちの資料をつぎはぎして書いたものです。大津絵がどういうものか見たことがない自分としては、なんとなくもどかしく感じていました。

その大津絵が見られる!しかも絵画展として。東京ステーションギャラリーで開かれた「もう一つの江戸絵画 大津絵」展です。私の中ではタイムリーな、この企画を作ってくれた東京ステーションギャラリーに感謝!

明治以降の文化人を惹きつける

しかも、宣伝用ポスターのコピーがふるっていました。

「欲しい!欲しい!欲しい!」

大津絵展のポスターこの不思議なコピーの意味するところは次のようなものです。大津絵は著名な画家による絵でもない、ただの土産物で、江戸時代は安易に捨てられてしまっていたのに、明治以降、文化人や画家たちがこぞって(欲しい!欲しい!と)と、価値あるものとして蒐集したから。

それを読んだだけでも「へぇ~」です。私が行ったとき、東京駅構内にあるステーションギャラリーは平日の昼にもかかわらず、わりと多くの人が訪れていました。

3階と2階の2フロアに、約150点を展示し、結構見応えがありました。でも、モチーフは似ているものが多いんです。「藤娘」はもちろん、「鬼の行水」とか「槍持ち奴」「座頭」「花売り娘」「若衆」「鼠と猫」とか、同じものが数点。これがまさに普通のお土産品で、版画で量産されていた、ということでしょう。

文字も書いてあるので、風刺漫画に近い感じです。思わずプッと吹き出してしまったのは、猫が酒を酒をぐびぐびと飲んでいる絵でした。

いったいこれを、なぜ明治以降の文化人たちをして「欲しい!欲しい!」と言わしめるほど価値をもったのか?この絵画展は、その蒐集家の目から見た展示になっています。そのテーマも興味深いですが、私自身がもつ、江戸時代の人が描いた藤娘って何だろう?という疑問に対する答えはありませんでした。

江戸の人たちの「面白がる」眼差し

しかし、美術館を歩きながら見ているうちに、気づいたことは、この大津絵と歌舞伎舞踊を生み出した江戸の人々の目線は同じだ!ということでした。

「藤娘」はそうでもないのですが、「供奴」とか、「越後獅子」とか、「うかれ坊主」とか、踊っていると、何となく、江戸の人々は、こういう人たちを面白がっているんじゃないかという目線を感じることがあります。

大津絵も、明らかに江戸の人々は、描かれているものを面白がっているのが、分かります。

ということでいろいろと楽しめる「大津絵」展。11月8日までです。新型コロナ対策のため、事前予約チケットを買う必要があります。

藤娘の大津絵


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