市川市東山魁夷記念館で「日本画と歌舞伎の世界」展3月21日まで

千葉県市川市とゆかりのある画伯

千葉県市川市は、日本画家の東山魁夷が住んでいたところを、小さな美術館にしていて、企画展が開かれます。今、「日本画と歌舞伎の世界」という企画展が開かれていて、緊急事態宣言になる前の昨年末、観にいってきました。

市川市東山魁夷記念館は、京成線の中山駅から15分ほど歩きます。中山駅は、駅前がすぐ法華経寺の参道になっている、趣のあるところです。参道を抜け、境内を通り抜け、さらに住宅街の坂を登りきったところに、記念館はあります。住宅街は道に迷いがちなのですが、道しるべとなる標識がところどころにあるので、迷わないで着くことができます。

記念館の外観です

東山魁夷画伯は、1945年から、亡くなる1999年まで市川市に住んでいらしたそうです。市川市は2005年、この記念館を建てましたが、会館15年を記念して、今回の展示が企画されました。3月21日まで開かれています。

6代目歌右衛門「揚巻」の打ち掛けや歌舞伎座が所有している日本画など

記念館の1階は、画伯の生涯の紹介と、画伯が使った独特の色の絵具など常設展示があります。そして、画伯と6代目歌右衛門との交流を物語る絵(歌右衛門が愛馬を亡くしたとき、歌右衛門を励ますために描いた絵など)があります。

また、歌右衛門をゆかりの中心に、歌舞伎座の緞帳で有名な山口蓬春や、橋本明治といった人たちの作品があり、緞帳の原画や、筋書きの表紙を飾る絵も展示されています。特に、橋本明治氏が、1962年頃、「徳川家康」という歌舞伎のために書いたノート(舞台場面や衣料案などなど)はとても興味深いです。

2階の展示の圧巻は、歌右衛門が「助六」の「揚巻」役でまとった打ち掛け。東山魁夷、山口蓬春、堅山南風の各画伯が描いた打ち掛けが、期間限定で世田谷美術館から移設展示されています。面白かったのは、南風が描いた、「笹に短冊」の打ち掛け。短冊の1枚は白紙なのです。歌右衛門に「好きな句を描きなさい」との意味だったそうですが、6代目は生涯、白紙のままにしたというエピソードが残っています。

2階にはこの他、歌舞伎座や明治座が所有している絵が、会期中、1カ月ごとに展示替えしながら飾られています。私が訪れた12月には、伊東深水の「春宵」(二人の芸者で、一人が一人の耳元にささやいている、思わずうっとりする作品)が展示されていました。その他、片岡珠子「花咲く富士」、前田青邨「景清」、山川秀峰「三番叟」、堂本印象「舞踊」、長谷川昇「京鹿子娘道成寺(6代目歌右衛門)」、同「藤娘(7代目梅幸)」など。

同館の説明資料によると、「花咲く富士」「三番叟」「京鹿子娘道成寺」「藤娘」は3月の会期末まで展示。「景清」「舞踊」は1月いっぱい展示。私の好きな画家、鏑木清方「さじき」が2月のみ展示、杉山寧の「鯉」が2~3月の展示となっています。

中山の法華経寺を散歩しながらふらりと

さて、記念館はこじんまりとした美術館(レストランも併設)で、東京の美術展を見慣れている人には、やや物足りない印象かもしれません。そういう方には、中山駅~法華経寺の参道も含めた一連のお散歩コースで楽しんでいただくのがよいかと思います。隣の船橋市民としては、ちょっと電車で出かけられる身近な地域の、貴重な資源なのです。(しかも、コロナ禍においても、事前のチケット予約の必要なく、ふらっと入れます)

ファンの方は多いと思いますが、東山魁夷画伯の絵を見ると、りんとした静けさが心に満ちますよね。私が好きな絵は初期の作品が多くて、山塊を上から俯瞰した「残照」と、馬シリーズの中の「緑響く」です。

「緑響く」は、この記念館のミュージアムショップで買った絵はがき用の額縁に入れて、リビングに飾っています(下の写真)。絵はがきサイズなので白い馬がちょっと小さいんですが、それでも毎日見ていると心洗われます。


最後までお読みいただきありがとうございます。

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