お囃子の世界を分かりやすく手ほどき~若手演奏家による若獅子会チャンネル

月に2回、小鼓のお稽古をしています。

「島の千歳(せんざい)」という小鼓が美しい長唄の曲に魅せられて、いつかやってみたいと思いこがれていました。まだ2年の新米です。

お師匠さんは、邦楽囃子方・福原流のお家元、福原百之助先生。

場所は、新宿区荒木町のお座敷カフェ・サロン「隠の座」(おんのざ)。かつての私の職場の近くで、足繁くランチに通っていた荒木町が、今はお稽古に通う場所となりました。

何も知らない人に寄り添って教えてくれる

百之助師匠は、お囃子方の若手が流派を超えて集まる「若獅子会」という活動をされています。

趣旨は、切磋琢磨して芸を高め合うためですが、それにとどまらず、広く邦楽のことを知らない人にも知ってもらうような取り組みや、お囃子だけの創作曲を作って演奏したり、他分野とのコラボレーション等の企画をされています。

私も、「こんなことを知らないで恥ずかしい」というごくごく初歩的なことを、この若獅子会のイベントから、学ぶことができました。

例えば、私達が歌舞伎や舞踊会に行ったとき、笛や太鼓、大太鼓による派手な始まりの知らせの音が鳴ります。これを聞くと気分がワクワク高揚しますが、普段は何気なく聞き流してしまいがちです。しかし、それは「着到」(ちゃくとう)という、そうした効果を狙ったお囃子の方々の重要な仕事であることも、知ることができました。

お囃子とは、笛、太鼓、小鼓、大鼓だけでなく、虫の声や鳥の声、蛙や赤ちゃんの声、雨や波の音などの効果音も含まれており、江戸時代から伝わるどういう道具を使って鳴らしているのかも興味深かったです。

2006年から始まった若獅子会のメンバーは、百之助師匠をはじめ、望月左太寿郎さん、堅田貴三郎さん、藤舎呂凰さん、福原百貴さんなど、第一線の演奏者の皆さんです。そんな方々が、お囃子の知識がほとんどない人に対しても寄り添って基本から何度も、しかも楽しく教えてくださる活動はすごく貴重だと思っています。

初めてのYouTube生配信は盛りだくさんの内容

3月、このコロナ渦で演奏会が中止になったことをきっかけに、若獅子会でもYouTube配信が始まりました。同月の試行配信をへて、10月11日には初の生配信「若獅子会特別公演」を行いました。今もアーカイブで残されていますので、ぜひ皆さんにご視聴いただければと思います。

2時間にわたる特別公演の内容は次のようなものです。(カッコ内は時間の目安です)

着到(はじまりの演奏)(17分~)

若獅子会のメンバー紹介(22分~)

ソーシャルディスタンス獅子(獅子もので使われる囃子を、演奏者がお互いを見ないで、息を合わせて合奏しているかの実演)(26分~)

本皮の楽器と合成皮の楽器の聞き比べ(32分~)

囃子・朗読と紙芝居「一寸法師」(45分~)

味線と出囃子(出囃子とは舞台に出て演奏すること)、囃子のみの演奏と三味線が入った場合の聞き比べ(1時間11分~)

→大薩摩の二人唐草、「蜘蛛の拍子舞」の中の舞

三味線と蔭囃子(蔭囃子とは舞台袖の黒御簾の中で演奏すること、三味線のみの演奏と囃子が入った場合の聞き比べ(1時間36分~)

→越後獅子の冒頭、狂いものの早渡り、さまざまな効果音(虫の声、鳥の声など春夏秋冬の長唄と合わせたメドレー)

三味線合方と囃子のメドレー:名場面集(1時間48分~)

→新曲浦島せりの合方、娘道成寺つなぎの合方、神田祭・屋台の合方、勝三郎連獅子・打合せの合方、楠公・木の葉の合方、静と知盛・送り笛、船弁慶・早笛、獅子・髪洗いの合方

「敷居が高い」と自分が言ったら終わり

ある日のお稽古で、私は百之助師匠に尋ねたことがあります。

「伝統への敬意と、外に向かって大衆性を打ち出すことを両立するのは難しくないでしょうか」「伝統芸能は敷居が高いといわれるので、その橋渡しの役割を果たされているのでしょうか」

百之助師匠は、こう言われました。

「敷居が高い、と言った時点で、そう言っている自分の目線は高いんです。それが敷居を高くしているんですよ」

その言葉にハッとしました。私も結構「日本舞踊は敷居が高い」と安易に言ってしまっていたからです。

若獅子会チャンネルを見ると、やっている皆さんがとても楽しそうなのが印象的です。ぜひご覧になってみてください。


最後までお読みいただきありがとうございます。

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