花粉症の季節に考えるきものの衣替え

温暖化時代に合ったきものの着方って?

3月に入って、冬の寒さがやわらぎ始めました。気温10℃以下だった日から、15℃くらいの日や、なかには20℃近い日もあります。三寒四温。それがジェットコースターのような日もあって、どうしても体調を崩しがちとなります。

「木の芽時」といって、草木が芽を出す、自然界が「無」から「有」を生み出す春先は、自然の一部である体も変化するのは当たり前。花粉症やら自律神経系の症状を起こしても、それは起きた方が良い体なのだと思って、つらい時期をやりすごしています。

とはいえ、着るものにも頭を悩ませる日々でもあります。

最近は温暖化の影響で、日本のかつての穏やかな四季も、夏の暑さ・冬の寒さの差が激しくなりました。今日は現代の気候にあった衣替え、実用的なきものの着方について、考えてみたいと思います。暑い夏への準備として夏物を買っておくなど、この時期にやっておくといいことについてもふれます。

冬に着ていたヒートテック下着を脱ぐ

冬は寒い!特に外を歩くときには袖、裾、襟がヒラヒラと開いてるきものは、冷たい外気が入ってきます。

私自身は、冬でも肌襦袢とステテコ(冬用)・裾よけしか着ていませんが、生徒さんには、「寒くないように、ヒートテックの下着を着てね」とか、「下は、スパッツを履くと良いですよ」と言ってしまいます。風邪をひかないように、とつい過保護に言ってしまうのですね。

しかし、15℃以上になったら、きものを着るだけで汗をかいてしまいます。ヒートテックを脱ぎましょう。私は冬用のステテコを脱いで、薄手のステテコにはき替えます。朝の天気予報を見て、下着を自分なりに調整してみてください。

実は15℃~25℃は、普通にきものを着るのに、一番ちょうど良い季節。つらい春先を越えると、次はきものを楽しむ時期がやってくるので、実はワクワク感のある時期でもあります。

単衣(ひとえ)が活躍する季節が増えた

さて、これまできものの衣替えというと、次のようなものでした。

  • 1~5月 袷(あわせ)のきもの
  • 6月   単衣(ひとえ)のきもの、
  • 7~8月 薄物:絽(ろ)や紗(しゃ)のきもの、カジュアルな場面では浴衣
  • 9月   単衣のきもの
  • 10~12月 袷のきもの

袷とは、裏地のついたきもの。単衣は裏地のつかないきもの。薄物の絽や紗は、透け感のある薄い生地のことです。

袷(あわせ)裏地がついている

単衣(ひとえ)は裏地がついていない

絽(ろ)は透け感のある薄い生地

紗(しゃ)も透け感がある。写真は表裏が違う色の「風通紗」

気温が20℃を超えると、裏地のある袷のきものを着るのは暑くてつらくなります。そこで、現代においては、

  • 1~4月 袷のきもの
  • 5~6月 単衣のきもの
  • 7~8月 薄物、浴衣
  • 9~10月 単衣
  • 11~12月 袷のきもの

というふうに着るようになりました。単衣のきものが活躍する季節が、4カ月!と、ぐっと増えたのです。下手をすると、4月下旬の暑い日や11月上旬の暑さの残る日に、こっそり単衣を着ていることもあります。「この暑いのに、袷なんて着ちゃいられない!」と、温暖化が長年の慣習を変えたともいえますし、より実際的になったといえます。

きもの屋さんでも、時代の変化にあわせて、以前は少なかった単衣の品揃えが増えています。値段が安く、洗濯も家の洗濯機で洗えるポリエステルのきもので、単衣のものが増えたのは嬉しいことです。

綿の単衣を楽しむ

もう一つ最近の傾向としていえるのは、浴衣の柄のバリエーションが増え、浴衣っぽくない(?)浴衣が増えました。何が言いたいかといいますと、そういう浴衣っぽくない浴衣は、綿の単衣として着られるということです。夏用の長襦袢を着て半襟を見せ、帯はお太鼓で締めれば、カジュアルなお出かけなら5月~10月まで着られる、便利なきものになりうるのです。

 

浴衣っぽくない浴衣の一例

綿の単衣の一例。「阿波しじら」お気に入りの1枚

しかも、最近は綿100%より涼しい、綿と麻の混紡が主流となりつつあります。綿・麻は絹と違って、リーズナブルかつ家の洗濯機で洗えるから嬉しい。夏は汗をかきますから、このことは何より重要です。

きもの屋さんが夏に向けて浴衣や浴衣地の反物を売り始めたら、5月~10月まで楽しめるきもの!という視点で買われるとよいと思います。

夏用の襦袢・半襟・夏用の帯板はこの季節に買っておく

きもの屋さんは、4月になると徐々に夏用のものを売り始めます。そこでこの季節は、暑さ対策として夏用のものを徐々に揃えていくとよいのです。夏用のものは意外と夏だけでなく、春~秋と長期に使えることもあり便利なものです。きもの屋さんは、冬に夏用の物を置いてくれませんので、この時期を逃さないようにしています。

夏用の便利なものとは、まず夏用の襦袢です。夏用の襦袢は、冬の襦袢よりも薄くて涼しい。なので、5月~10月だけでなく、4月や11月でも暑い日はつい、きものと半襟は冬用だけど、夏用の襦袢を着て調整してしまうことがあります。

夏用の襦袢は薄くて涼しい。春や秋でも暑い日は、襟だけ取り替えて着ている

半襟には、半襟だけで着られる「うそつき」というものがあります。肌襦袢に半襟だけ付け、襦袢を着ない分、1枚少なくて涼しく着ることができます。半襟だけの「うそつき」は、かつては装道の美容襟が主流でしたが、今はいろいろなメーカーのものがありますので、きもの屋さんで探してみて下さい。

半襟だけのうそつき。真夏はうそつきで、襦袢1枚はぶいて着てしまう

帯板は、夏用のメッシュのものを、1年中使っています。冬用の帯板は暑くて夏には使えませんが、夏用のメッシュは冬にも使えますので、夏用のものがオススメです。最近の帯はしっかりしているので、帯板が薄くても帯がシワシワになることはありません。

冬用の帯板(上)と夏用の帯板。私は1年中、夏用で通している

下に着るものに汗を吸わせてきもの本体に汗を移さない

20℃を超えたら、汗をかいて当たり前、洗濯をこまめにすることを前提に、きものを着ています。どういうことかというと、きものの下に着る肌襦袢、半襟、裾よけ、補正用のタオル・晒しなどに汗を吸わせ、こちらをこまめに洗濯することで、なるべくきもの本体に汗を移さないようにするのです。

肌襦袢、足袋は肌に直接触れるものですから、1回お稽古で着たら必ず洗濯しましょう!


最後までお読みいただきありがとうございます。

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