衿を決める胸ひもの結び方~初心者がつまずく着付けのピンポイントその2

「初心者がつまずく着付けのピンポイント」2回目は、胸ひもです。

胸ひもは、私自身もなかなか上手にできませんでした。衿がゆるゆるしてしまいがちで、苦心しました。

これからお伝えする方法は、その苦心のなかから、私の尊敬する芸者さんから実践的な方法として教えていただいたものを参考にしました。

腰ひもの疑問点に答えます

まず胸ひもの話題に入る前に、前回の腰ひものブログで読者の方からいただいた疑問点にお答えしたいと思います。

腰ひもで難しいのは、裾線を決めることでした。初心者の方は、手が上がりがちで、裾線が上がってしまうと書きましたが、今度は裾線が下がって裾がダラダラ落ちてしまうという指摘を受けました。

そこで、写真の下の赤い↑のように、裾の先(褄先といいます)だけを上げるようにします。まず下前は、写真の上の赤い↑のように、手首と4本の指をクッと上に上げて、ウエストまわりに押し込むようにするといいです。

上前は、写真のように左手と右手を使ってやはり褄先を上げます(上と下の赤い↑)。

下前は左手を身八つ口から入れて、上前は右手で矢印のように引っ張って,体の筒にきものの布をシッカリと巻きます。

次に、「腰ひもを、お相撲さんのまわしのように斜めに締める」というのが分からないとおっしゃる方がいましたので、写真で説明します。

写真の×でなく○のように締めます。前がおへそのあたり、後ろは骨盤の上2~3㎝です。そのためには、骨盤を立てて、腰椎をしっかりと伸ばすことが大切ですね。

きものベルトを使わず、一重上げもしない胸ひもの結び方

それでは、いよいよ胸ひもに入りましょう。私のやり方は、きものベルト(コーリンベルト)を使わず、一重上げもしないやり方です。

その理由は、第一に「胸がない」からです。豊かな胸がきものを押さえてくれるということがないので、衿がゆるゆるになりやすく、重力を使って上から下へとシッカリ引っ張るこの方法にたどりつきました。

きものは洋服と違って、体型によって着方を工夫する必要があります。どの人にも合うオールマイティなやり方はないと思うのです。ですので、読者の皆さんは皆さんの体型に合ったやり方を見つけていただくのが一番だと思います。

それでは、やり方を説明します。まずは教科書どおり、きものの脇にある「身八つ口」から後ろ身頃に手を入れて、手刀でトントンと、後ろのおはしょりを伸ばします。

きものをたくし上げて、長襦袢(私の場合は半襦袢ですが)の背縫いを引っ張っておくと、きものの衿と襦袢の半衿がピタッと添うようになります。

上前と下前の衿の下の方をしっかり引っ張って、バストにきものの生地を沿わせます。おはしょりの一番下まで、赤い矢印の線のように引っ張ってください。

下前の衿を上下で引っ張ってきれいにします。耳の下の衿は半襟と重なっています。

上前の衿も同様にします。写真は生地が硬い大島紬の場合です。柔らかものの生地の場合は,ダランとなりやすいので、半襟をもっと少なく出すようにしています。

きものの上前を右手でしっかりと押さえて、左の手で右手にひもをわたします。右手はその場所をキープしながらひもをもらいます。

左手の4本の指できものの生地を押さえながら体に巻きます。両手が背中で出合って、ひもを交差させます。

ひもを結び、先をからげて処理します。胸ひもは、腰ひもほどギュッと締めません。クッと押さえる感じ。場所は肋骨の一番下と2番目の間くらいです。

背中のシワをとります。①背縫いの下を引っ張り、②身八つ口から手を入れて、左右を引っ張り、③脇の下のおはしょりを下に引っ張ります。

先ほど取った背中のシワが前見頃に影響していますので、前見頃と後ろ身頃の縫い線にダーツをとって、シワを入れてしまいます。

さてここから、一重上げの代わりとなるおはしょりの整理を行います(この方法は、私の尊敬する芸者さんから教えていただいたものです)。

おはしょりの中に右手を入れて、中にある下前のおはしょりを上に上げ(赤い矢印のように)、同時に右手の小指を使っておはしょりの下線を整えます。

おはしょりの中に入れた手はこんな感じ(赤い丸)。

おはしょりをきれいにして、上からそれを押さえるように伊達締めを締めます。伊達締めを使うのは、広い面できもの生地を押さえることができるからです。

伊達締めを締めます。後ろで折り上げると(青い矢印)スッキリと締められます。

伊達締めの位置は、胃のあたりです。食べ過ぎて胃がもたれる人必見!胃が支えられて気持ち良いですよ。

結ぶと結び目が玉になってゴワゴワするので、結ばない方法があります。

下の写真のように1回からげたら、ひもの両端を交差させます(赤い矢印)。

交差したところを、指で押さえます。

交差の下から出たひもは上から挟み込み(左写真)、上から出たひもは下から挟み込みます。

仕上がりはこんな感じです。結んだのと同じくらいしっかり止まります。

仕上げに、前と後ろのおはしょりをしっかりと下へ引っ張ってシワを取りましょう。

この段階で半襟がグダグダしたら、上前の衿と下前の衿(身八つ口から左手を入れて)を引っ張ることで、ある程度の修正可能です。

半襟を決める長襦袢ときものの着方は女優さんになったつもりで!

半襟を美しく決めるためには、長襦袢(半襦袢)を着る段階で、背縫いを下に引っ張り、衣紋のライン(赤い曲線)を作ることが大切です。

さらに、きものをはおる段階では、先ほど作った長襦袢の衿にきものの衿を乗せます。コツは、①首の後ろでは、きものの衿が襦袢の衿をかぶるように、②体を後ろにそらせて胸を上げ、その胸に前の衿を乗せるようなイメージで着ます。

こんなふうに鏡を見て、女優さんになったつもりで(!)体をそらせ、衿を確認しましょう。

いかがでしたか?きものの着付けは、皆さんお一人おひとりの体型に合った方法があるということ、そして、着るときには腰椎や背筋を伸ばして姿勢よくすることを目指していただくと、さらに楽しくなるのではないでしょうか。


最後までお読みいただきありがとうございます。

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