「繊細さん」(HSP)は日本の古典芸能に取り組むと、その特性が生かせます

前にも書きましたが、私は“繊細さん”とも呼ばれる、HSP(highly sensitive Person)です。HSPとは、例えば、聴覚、嗅覚などが人より敏感である、他人の影響を受けやすい、細かいことにとらわれすぎるなど、敏感すぎる、繊細すぎる人たちのことです。HSPは、1996年、米国の心理学者エイレン・アーロン博士が提唱した概念で、人が先天的に持つ気質のことです。

3歳で日本舞踊と出会い、途中の中断がありながらもなぜだかいまだに続いている私は、HSPという特質が日本舞踊とマッチしていたと思います。今日は、HSPの人が、日本の古典芸能に取り組むと、自分の特性を生かせるというお話を書きます。

HSPって?「弱い」ことを欠点と思いがち

HSPの概念が広まったのは、さまざまな本が出版されるようになった今世紀に入ってから。私も、たまたま図書館で、『繊細で生きにくいあなたへ』(テッド・ゼフ著2007年)という本を見つけ、あ、これ私?と導かれるように手に取りました。この本を読んで、若いときからの悩みが「そういうことなんだ」と、すっと腑に落ちました。

日本では、2018年武田友紀さんの『繊細さんの本』の本が大ヒットし、HSPが広く知られるようになりました。「繊細さん」というのは、武田さんの絶妙な命名だと思います。この命名のおかげで、HSPが市民権を得たように思います。

精神科医の長沼睦雄さんは、HSPの性質として、次のようなものをあげています。
1)刺激に敏感に反応する
2)人の影響を受けやすい
3)直感力があり、ひらめきが強い
4)慎重で、自分のペースで行動することを好む
5)内的生活を大事にする
『敏感すぎる自分を好きになれる本』(2016年)より

強い刺激のあるものは、脳で処理しきれず、疲れてグッタリしてしまいます。私の場合、ジェットコースターとかホラー映画とか、まったくダメでした。(最近は、LEDライトの光が目を突き刺すように感じられて、困ることがあります)

世界中のどの社会でも、人口の5人に1人にHSPがいるといわれているので、少数派ではあるのですが、まったく人数が少ないというわけではありません。でもまあ、大抵の人は刺激の強いものを求めて盛り上がったりしますから、子ども時代や若い頃は、皆と一緒に楽しめないというか、何か損したような、「自分は弱い」というふうに欠点とみなしてきたように思います。

HSPの子どもをHSC(highly sensitive child)と呼び、親御さんにとってHSCの子どもを育てづらいという問題意識から、今こういう本が読まれることも多いようです。

振り返ると確かに、私もなかなか扱いづらい子どもだったかも、と思います。自営業で忙しかった両親は放任だったので、結果オーライでした。自分の世界に浸って楽しんでいました。

人生でいろいろ経験を積むと、欠点と思ってきたことも、案外そうでもない、個性なんだからそれを生かせばいいと思えるようになるわけですが、そのことを明確に言ってくれる大人が周りにいないと、HSCや若い人は、なかなか自分を肯定できなくて苦労することもあると思います。

芸術の美しさが生きるエネルギーになる

HSC、HSPの人々は、芸術系や、自らの繊細さ細かさを生かせるものを、仕事あるいは趣味として持つと、それがエネルギーになるというか、元気に楽しく生きていけると思います。

自分の経験からいえるのですが、HSPは感じやすいがゆえに、良いもの、美しいものに深く感動してしまうのです(ある意味、とても単純)。良いもの、美しいものから、生きるエネルギーをもらっている、という感じなのです(逆に、悪いもの、汚いものばかりに接しつづけると、人よりダメージを大きく受けるかもしれません)。

だから芸術(アート)系とか、自然(ネイチャー)系のものに強く惹かれます。

私のHSPの資質は、多分に父親から受け継いでいます。父は生活のために商売をしていましたが、商売よりも趣味の人で、山登り、カメラ、クラシック音楽が好きでした。山と写真(齢をとってからは各地の石仏写真を撮っていました)と、クラシック音楽の美しさから生きるエネルギーを得てきたんじゃないかと思います。男としては長生きの89歳。身体はヨタヨタしながらも、ぼけずに自分を保って生きています。

父が撮った石仏の写真(加西市羅漢寺)

私自身、もとの編集者という仕事では、人にインタビューし、記事を書く際、HSP特有の「人に深く共感する」力を大いに活用していたと思います。その人が一番何を言いたいだろう?この問題の本質は何だろう?と深く考えることが、好きでした。そして、そのことを言語化することも、楽しかったのです(もちろんキツイこともありましたが、不思議と頑張れました)。

日本舞踊、いや能・狂言や邦楽でも、茶道でもよいのですが、伝統文化は、何百年もの間伝わってきた、変わらないものがありますよね。その変わらない、人々が捨てずに、大事に大事に伝えてきた普遍的な何かに、惹かれるのではないかと思います。

日本舞踊の場合、長唄、常磐津、清元など江戸時代から続く邦楽の、昭和の名演奏家による音源を、何度も何度も聞きながら踊りの練習をしていますから、かけ合いの間(ま)や、一つの言葉にいくつもの意味が込められている唄などを肌で感じ、身体に染みわたるようなエネルギーをもらっているような気がします。

そして、踊りの身体の使い方から、現代人が忘れてしまった身体の智恵、生活の知恵に応用できることもたくさんあると感じています。

感受性が鋭く深い共感力をもつHSC、HSPの皆さんは、日本の古典の深さ、美しさをとらえる力があり、ご自身の能力を十分に発揮できる分野だと思います。

HSCのお子さんは、その繊細さ、敏感さゆえに生きづらさを抱えるのではないかと心配する親御さんもいらっしゃるかと思いますが、伝統文化の教室では、社会で生きていくのに必要なたしなみも自然と身につけていくことができますので、きっと将来の役に立つと思います。


最後までお読みいただきありがとうございます。

日本舞踊やってみたい!と思われた方は、ぜひ無料体験レッスンにお越しください。

>>詳細はこちらをクリック