電車で1時間かけて通っています
お稽古歴1年10カ月りりあさん(中学2年生),お稽古歴1年8カ月ここらさん(中学3年生)
お稽古は、妹のりりあさんの方が先輩で1年10カ月、姉のここらさん1年8カ月(取材時)。りりあさんは舞妓さん志望、音楽が得意で歌が上手。マイペースでおっとりタイプ。ここらさんは学校の勉強も一生懸命。妹の世話をよくするしっかり者のお姉さん。
三乃智 姉妹で通ってきている中学生のお二人です。初めは妹のりりあさんだけでした。小学6年生のりりあさんがお母さんと一緒に見学にこられ、「将来舞妓さんになりたい」とキッパリ言ったのが印象に残っています。
りりあ(妹) はい。
三乃智 その2カ月後に、お姉さんのここらさんも通うようになりました。お母様から、「姉のここらも一緒に通わせたい」とご連絡があり、二人で一緒に通うようになりました。
ここら(姉) はい。
三乃智 ここらさんが日舞をやろうと思ったのはなぜですか。
ここら(姉) 私は将来女優になりたくて、何か特技として自信の持てることがあったらいいなと思って、母から言われたこともありますが、それまでも茶道や生け花などをやっていましたし、日本文化をいろいろ学べていいかもしれない、それに私は負けず嫌いなので妹がやっているなら私もやろう、と思いました。
三乃智 妹への対抗心もあったのね! りりあさんは、あまり対抗していないみたいだけど(笑)。
りりあ(妹) そうですね。私はまったくないです。
三乃智 姉のここらさんと一緒にお稽古を始めた時、実はすごく心配したことがあって…。りりあさんはすっかりお姉さんに頼ってしまって、私と話さなくなったし、お稽古中もぼんやりしていることがありました。困ったなぁ、りりあさんの方が舞妓さんになりたいなら一生懸命やってほしいのに、と焦りました。
りりあ(妹) あ、はい…そんなことが…
三乃智 でも2回のおさらい会(発表会)を経て、だんだん良くなってきたし、転機はりりあさんが「失恋した」と言ったときね。背筋が一本ピーンと通って、腰が落ちて体がしっかりし、踊りが見違えるようになりました。
ここら(姉) (うなずき、ほほえむ)
三乃智 お稽古は月2回、土曜日、二人で一緒に電車で1時間かけて通ってきています。学校行事もあるし、別の習い事もされているし、2週間に1回なんですが、2週間たつと習ったことを忘れちゃうでしょう?
りりあ(妹) 私は家でも練習しています。夜8時にアラームをかけて、着物には着替えずに洋服ですが、1回習ったところを復習するのが日課になっています。
三乃智 ここらさんは高校受験もあるし、なかなかそうはいかないわね。
ここら(姉) たまに一緒にやることもあります。発表会の前は特に練習しています。
三乃智 発表会は二人とも、去年のゆかたざらいと今年のおさらいと2回体験しました。おさらい会は大変でしたか?
りりあ(妹) めっちゃ緊張しました!見に来てくださった大お師匠さん(三乃智のお師匠さん)を見て、「ミスったらどうしよう」って。
三乃智 本当にりりあさんはすごく緊張してましたね。下ざらい(リハーサル)の時より、表情が硬いし体が動いてないから、「大丈夫」って声をかけたけど。
りりあ(妹) 「羽根の禿」で、ぽっくり(下駄)はいておすべりが難しくて…。
でも緊張しましたけど、たくさんの人とコミュニケーションがとれて、楽しかったです。
ここら(姉) 私は、振りを覚えたり、人前に立つことは慣れていなかったので、大変でしたが、終わった後の達成感、楽しいと思えた瞬間が何よりも素敵な時間だと思いました。
三乃智 ここらさんは、「私は緊張しない!」と自信ありげに言っていたのが印象に残っています(笑)。
ここら(姉) 発表会直前には、とても練習しました。動画を見て細かいところを修正したり、一生懸命やったので、自信はありました。
三乃智 やっぱり負けず嫌いなのね! 最後に、お二人にとって日本舞踊はどういうものなのかを教えて下さい。
りりあ(妹) うまく踊れたなと思うと楽しいので、私は日本舞踊がとっても好きです。私にとって日本舞踊は、感情や物語を表現する方法のひとつだと思っています。実際に気持ちや想いが踊りに反映されるので面白いです。
三乃智 中学生にしてそういうことを言えるって、なかなかすばらしい。例えば、どういうふうに?
りりあ(妹) 例えば「羽根の禿(かむろ)」で、禿が羽根つきやまりつきをする振りのところは、楽しんで踊ると伝わると思いましたし、「わすれな草」で悲恋の末に倒れるところは、実際に悲しいことを思い出しながら倒れるようにしました。
ここら(姉) 私にとって日本舞踊は、自分自身の成長を感じられるもの、自分自身を人間として高められると思っています。
三乃智 ふ~む、具体的には、どういうこと?
ここら(姉) そうですね。日本文化に触れていると、作法や礼儀も学べます。人前に立ったときにきちんと挨拶できたり、感謝の気持ちを表したり、着物を着て姿勢がよくなり、所作がきれいになることもそうです。