おさらい会の緊張感と達成感 体にも心にも心地良いもの
さとこさん(50代前半)
【プロフィール】公務員として30年働いた後、退職。専門職としてパート勤務。着物関係の仕事をしている親族の影響で若いときから着物に親しむ。お稽古歴2年(取材時)
三乃智 さとこさんが日舞を始めた動機を教えて下さい。
さとこ ずっと仕事一筋で生活してきました。50代を目前にして、仕事を辞めた後も打ち込める趣味を持ちたいと思うようになったことがきっかけです。定年が伸びている今、65歳までずっと仕事をして、その後に何かを始めるのではきつい。「今だ!」と真剣に考えました。「体を動かしたい」「着物が好き」等の条件を当てはめていったら、日舞にたどりついたのです。
三乃智 さとこさんは初め、月2回土曜日にいらして、お忙しい仕事とお稽古を両立させていましたが、その後、退職されてパート勤務及び主婦業の合間に、週4回(毎週1回)お稽古にいらっしゃるようになりました。毎回いつも新しく習ったところをよく覚えていらして、家でも練習をしているのですね?
さとこ そうですね。今は時間的な余裕もできましたので、「1日1回は舞う」が目標です。タブレットにお師匠さんから配信された動画を反転させて見ながら練習しています。新しく教わったところを復習してから、通しで踊ったりしています。着物に着替えたりせず、洋服のまま、30分程度です。
それから、ノートを作って、自分に分かる程度のものですが、振りを書いて、お師匠さんに指摘されたことを書き記しています。
三乃智 これまでの2年間に3度のおさらい会(発表会)に出演した(取材時)さとこさん。おさらい会はなかなか大変でしょう?
さとこ おさらい会は大変です。晴れ着を着て、皆さんの前で踊るという「非日常空間」は、あの場でしか味わえない特別なもので、とても緊張します。
ミスはするし、もっとこうすればよかったと反省ばかりですが、それ以上に「よく頑張ったなぁ」「よくやったなぁ」と思えるんです。
あそこに向かって一生懸命がんばって、最後はやりきったという、達成感を味わうことができます。
また、普段はお会いできない他のお弟子さん達の踊りを見たり、お話しすることができて、学びも多いです。
三乃智 今のさとこさんにとって、日本舞踊はどういうものですか?
さとこ 生活に張りや彩りを与えてくれるもの。体にも心にも心地良いものです。
楽しくてもっと上手になりたい。私は、時代小説を読むのも好きですので、お師匠さんがお稽古をしながら、ときどき江戸時代の人々のお話をしてくれるのも面白いです。
体の面では、もともと足首が硬くて立ち座りが大変だったのですが、今はだいぶスムーズになりました。お師匠さんの言われるように、身体をもっと上手に使えるようになれるといいなと思っています。
最初は日舞にこんなにハマるとは思っていなかったです。この年でこんなにハマれるものに出会えたのが嬉しい。いつか「私の一部です」と言えるくらいになりたいです。